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PPL 2021:招待講演

PPL2021では,以下の2件の招待講演を予定しております.

高瀬 英希 京都大学
関数型言語ElixirのIoTシステム開発への展開
松本 宗太郎 Square, Inc.
Ruby 3の新機能としての静的型検査の開発

招待講演(1): 関数型言語ElixirのIoTシステム開発への展開

高瀬 英希(京都大学)

概要

IoT(Internet of Things)は情報科学の総合格闘技である.多様かつ大量の計算機器がネットワークを介して密接に絡み合い,様々な分野の技術領域を結集させて,大規模かつ複雑なIoTシステムが構築される.講演者は,IoTシステム分野におけるElixirの可能性に着目している.Elixirは2012年に登場した関数型言語であり,処理の振る舞いではなくデータの扱いを直接的に操作するためのライブラリや記法が豊富に整備されている.加えて記述容易で開発生産性が高く,並行/並列システムを容易に実現できるという特徴がある.本講演では,Elixirの特徴をIoTシステム開発に展開するための取り組みについて紹介する.関数を部品と捉えてその間の接続関係と並行処理を表現した処理フローは,データフロー型のシステムアーキテクチャの設計と親和性が高い.これを活かしたFPGA設計の最適化手法を提案する.また,アクターベースの軽量かつ頑強なプロセスモデルをIoTシステム通信機構に応用する試みを紹介する.元来の組込みシステム研究者が考えるプログラミング言語のIoTシステム分野への可能性について,PPLの参加者の皆さまとともに議論したい.

講演者略歴

京都大学大学院情報学研究科 准教授/科学技術振興機構(JST)さきがけ研究者.博士(情報科学).組込みリアルタイムシステムの実行環境およびシステムレベル設計技術に関する研究に従事.最近の興味は関数型言語によるIoTシステムの設計手法.情報処理学会組込みシステム研究会,電子情報通信学会リコンフィギュラブルシステム研究会,SWEST,TOPPERSプロジェクト,ROSJP,ALGYAN,NervesJPなどなどで活動中.

招待講演(2): Ruby 3の新機能としての静的型検査の開発

松本 宗太郎(Square, Inc.)

概要

Rubyは静的な型付けを行わない「動的型付け」のプログラミング言語として開発されました.この特徴はメタプログラミングの活用を推進し,Ruby on Railsなどの広く利用されるソフトウェアを実現する基礎となってきました.その一方で,プログラムの挙動を静的に検査あるいは理解することを困難とし,特に大規模な開発において不利益となる点が多かったことも事実です.2020年末に公開されたRuby 3では「静的な型検査の提供」が重要な機能追加の一つとなり,講演者を含む多くの開発者が労力を注いできました.この講演では,Ruby 3の型検査はどのようなものになるのかを紹介し,その背景にはどのような動機・要求・制約があり,どのような議論や妥協があったのか,特に実用的なプログラミング言語の機能開発という観点を重視して話をします.

講演者略歴

2017年よりRuby向け型検査ツールSteepの開発を開始し,2019年よりRubyコミッタとしてRuby 3開発に従事.2019年にSquareにソフトウェアエンジニアとして入社し,社内のRuby開発者とともにSteepの開発・評価・試験を行っている。